研究概要 |
目的:わが国においても急増している前立腺がんに対し、臨床面ではいまだ合意形成がなされていないPSA検診の意義について医療経済の立場から検証する。 対象と方法:全国の40歳以上80歳未満の男性を対象にPSA検診に対する意識を把握するアンケート調査を実施し、PSA検診の受診行動を医療経済の視点から検討する。 結果と考察:26,186名の回答を解析したところ、前立腺がん検診を受けたことがある者は19%にとどまる。検診の方法は、人間ドックが37%、住民検診が25%、職場検診が17%である。「前立腺がんは欧米で最も多いがんであり、日本でも急速に増加する傾向にある」ことを知らなかったのは52%である。このことを知って、今後の検診の受診行動に影響するとしたのは51%である。「前立腺がん検診は血液を採取する簡便で負担が少ない方法である」ことを知らなかったのは72%である。このことを知って、今後の検診の受診行動に影響するとしたのは72%である。乳がんに対する社会的な啓蒙運動(pink ribbon)を知っているのは58%であるのに対し、前立腺がんに対する啓蒙運動(blue clover)を知っているのは9%にとどまる。前立腺がん検診のWTP(Willingness To Pay)は52,772円(平均値)、精密検査は59,752円、心配して医療機関を受診した場合は55,975円である。胃がん検診の各46,874円、54,417円、49,748円より高めである。 結論:前立腺がん検診受診のWTPは他のがんよりも高く、前立腺がん検診の動機づけとして検診の方法や科学的根拠についての積極的な啓蒙活動が有用と考えられる。
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