研究概要 |
本研究は、わが国においても急増している前立腺がんに対し、臨床面ではいまだに合意形成がなされていないPSA検診の意義について医療経済の立場から検証することを目的とする。全国の40歳以上80歳未満の男性を対象に、インターネットを用いてPSA検診に対する意識に関するアンケート調査を実施し、得られた26,186名の回答を解析した。 PSA検診の受診行動をWTP(Willingness to pay:安堵感・安心感の対価)で見ると、胃がん検診は46,874±6,181,506円(M±SD)であるのに対し、前立腺がん検診は52,772±6,242,551円、精密検査でも各54,417±6,193,472円、59,752±6,253,7431円と高い。また、がんが心配で医療機関を受診する場合のWTPも、胃がんが49,748±6,181,684円であるのに対し、前立腺がんは55,975±6,242,861円と高い。ただし、中央値、最頻値に差は見られない。カイ二乗検定を行うと、前立腺がんが欧米で最も多いがんで、日本でも増加傾向にあることを知っていたのは、全体では46%であるが、検診受診者では78%と有意に多い。前立腺がん検診は血液を採取する簡便で負担の少ない検査であることを知っていたのは、全体では28%であるが、検診受診者は86%である(P<0.001)。胃、肺、大腸のがん検診を受けたことがあるとしたのは、全体では各47%、35%、44%であるが、前立腺がんの検診受診者は、各82%、66%、78%と、有意に他のがん検診も受診している。身内にがん治療を受けたものがいるとしたのは、全体では52%であるが、PSA検診受診者は58%と有意に多い。次年度は、これらの結果を踏まえ、医療経済の観点からPSA検診は任意型検診にとどめるべきか、対策型検診として推奨すべきか、推奨する場合はどのような条件が具備されるべきかについての検討を行う。
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