研究概要 |
本研究は、わが国においても急増している前立腺がんに対し、臨床面ではいまだに合意形成がなされていないPSA検診の意義について医療経済の立場から検証することを目的とする。すなわち、これまでの文献の分析から、前立腺がんに対するPSA検診の利益と不利益を比較考量すると、無症状の男性に対するPSA検診は推奨できないとされる(U.S.Preventive Services Task Force,2008年)。その一方、欧州前立腺がん検診無作為化試験(ERSPC)では、55~69歳の男性約16万人を対象とした11年間の追跡調査で、PSA検診では検診のエンドポイントである死亡率の有意な減少(前立腺がん死亡リスクの相対減少率21%)が認められている(Schroder FH et al.N Engl J Med,2012年)。 本研究では、全国の40歳以上80歳未満の男性を対象に、PSA検診に対する意識に関するアンケート調査を実施し、得られた26,186名の回答を解析した。自由意見のテキスト分析を行うと、前立腺がん検診を受けた者(n=1,807)の検診方法に対する意識は、PSA検査は安心、簡単、簡便、直腸診では恥ずかしい、痛い、エコー検査では不安のkey wordが抽出された。前立腺がん検診を受けた者は、積極的、定期的、早期発見、良いなどの肯定的意見が多いが、受けていない者は、心配、怖い、恥ずかしい、啓蒙、知るなどの否定的な意見と情報提供を求める意見が多かった。KJ法による内容分析を行うと、PSA検査を受けた者の印象では、簡便・簡単(29%)、安心(12%)、直腸診の負担感(6%)などがカテゴリー化された。前立腺がん検診に対する意識では、自分とは無関係(19%)がある一方、前立腺がん検診啓蒙の大切さ(18%)、受診機会の増大(11%)など、前立腺がん検診を肯定的にとらえる項目がカテゴリー化された。
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