【目的】 本研究ではmicroRNA(miRNA)について、薬物誘導性肝障害の病型を区別し、高感度に診断できるバイオマーカーとしての確立を目的としている。現在までにmiRNAと薬物代謝型チトクロムP450酵素や核内転写因子の基礎的研究を終え、バイオマーカーとしての有用性を示す事ができた。しかし、反応性代謝物が関与する細胞障害型薬物誘導性肝障害には免疫学的因子が大きく関わっており、この因子を考慮した全体の予測系の構築が大切である。しかし、免疫因子を含めた肝障害を予測できる動物試験系が極めて少ないことが研究の障害になっていることから、免疫因子の関与とmiRNAの関与を総合的に判断できる試験系の構築を目指して研究を進行中である。 【方法】 主にBalb/CまたはC57BL/6マウスについて、前者はTh2、後者はTh1由来の反応を強く検出出来る系として用いた。ハロタン、ジクロキサシリン、ジクロフェナク、フルタミド、メチマゾールについて免疫学的因子の関与を検討できる動物モデルの作成を行った。正常マウスについて、投与方法を工夫することによって、肝障害を発症させ、in vivoにおける反応を解析した。さらに、ヒトモノサイト由来のTHP-1細胞を用いて、in vitroの検討も併せて行っている。 【結果および考察】 ハロタン、ジクロフェナクについては、Th17細胞有為な反応が、ジクロキサシリン、フルタミド、メチマゾールについては、Th2細胞有為な免疫反応の関与を明らかにすることができた。現在これらの反応に関与するサイトカイン類の関与が薬物代謝能におよぼす影響と、miRNAの関与について検討を行っている。さらに、昨年度から行っている末梢血による肝臓病態診断についても研究を進行中である。
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