研究概要 |
我々はLDアイソザイムパターンの異常が、LDHA,LDHBのDNAメチル化による発現量のバランスの崩れに基づくことを明らかにしたが、このときのmiRNAプロファイルを網羅的に比較・解析する。そのために、各種細胞株のLDHA,LDHB遺伝子プロモーター領域のメチル化を調べたところ、他の白血病・リンパ腫、脳腫瘍、肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌、泌尿生殖器系の癌(腎癌、尿管癌、膀胱癌)64種類のうち、胃癌細胞株で4種類、膵癌細胞株で1種類にLDHBプロモーター領域のメチル化を認めた。LDHA遺伝子メチル化は見出されなかった。 癌細胞ではワールブルグ効果、すなわち好気的解糖が行われている。すなわちLDHAが多い方が得であり、LDHB不活化は生存戦略として合理的と考えられる。糖の少ない状況下ではGT1発現が亢進し、グルコースの取り込みが盛んになり乳酸をたくさん合成し増殖しているが、K-rasなどの変異が入っている方が強く、ヘキソキナーゼ阻害剤3BrPA添加で生きられなくなる。LDHAはHIF1αの経路も知られており酸欠条件で増加する。そこで、低グルコース状況、低酸素状況でLDHAを巡る環境はどのように変化するのか、LDHB遺伝子メチル化の胃癌細胞株を実験対象として選択し、非メチル化細胞株を対照として調べる。K-rasは解糖系との関連性が予測されるので、LDHBメチル化でK-ras変異を有するNEDATE,PSN1、有しないMKN28,MKN74,KATOIIIを選択した。脱メチル化剤、ヒストンアセチル化酵素阻害剤を加えて培養し、遺伝子発現の変化を網羅的に遺伝子発現量とmiRNA発現量のマイクロアレイで調べた。また、Oxamate添加によるLD阻害の影響、3-bromopyruvate添加によるヘキソキナーゼ阻害による解糖系の阻害の影響も同様に調べている。
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