研究課題
我々は以前から加齢や環境要因によるエピジェネティクスの攪乱が生活習慣病の原因と考えていたが、ゲノム、エピゲノム、miRNAなどの攪乱が組み合わさって転写因子も含めたトランスクリプトームの攪乱をひきおこし、それによって種々の表現型が形成されていると考えている。腫瘍マーカーは発癌によって誘導される臨床検査項目である。その代表である1型糖鎖であるシアリルルイスA(CA19-9)は、フコース転移酵素の一つであるルイス酵素(FUT3)によって生成されるが、FUT3の遺伝子多型によってCA19-9値も異なる。しかしながら、本来ルイス酵素活性が欠損してCA19-9値がゼロである個体でも癌患者では上昇しうることを見出した。これはFUT3遺伝子変異というゲノム異常によるものと同定したが、正常組織と癌組織における糖鎖発現が異なり、ゲノム異常だけでなく癌組織におけるエピゲノムやmiRNAの関与も疑われたので、次年度にさらに研究を進める予定である。塩基配列変異に起因する発症や検査値異常の場合を想定して、特に癌細胞株を使用してフローサイトメーターとPCRを軸とした実験を行った結果、癌関連遺伝子群の塩基配列変異がおこる前に、その兆候として局在する遺伝子部位の複製開始プログラムが変化し、極めてゲノム不安定な状態になっていることを明らかにした。すなわち、ヒトゲノムにおける複製開始部位の変化は、その複製タイミングの変化と密接に対応していることが判明した。また、ヒトゲノムにおいて、複製タイミングがS期前半から後半へ転換しているゲノム部位には、癌関連遺伝子群が集中して局在しており、一塩基多型や遺伝子増幅の高頻度領域と密接に対応していることも判明しつつある。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (6件)
Japanese Journal of Clinical Oncology
巻: 41(2) ページ: 165-171
Advances in Clinical Chemistry
巻: 52 ページ: 145-168
Annals of Clinical Biochemistry
巻: 47 ページ: 541-548
BMC Research Notes
巻: 305(3) ページ: 305
Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism
巻: 95(8) ページ: 4003-4011
腎と透析
巻: 70(2) ページ: 221-223
Phamacogenomics
巻: 11(12) ページ: 1743-1750
臨床検査
巻: 54 ページ: 1689-1692