研究課題
生体機能性RNA分子であるmiRNAは、タンパク質をコードする遺伝子の発現を多様化させるエピジェネティクス因子と考えられ、近年、miRNA自身が、癌遺伝子ならびに癌抑制遺伝子としての性質を備えていることが明らかにされた。がんをはじめとする様々な疾患における臨床検査値異常の分子機構とも密接に関連していると考えられる。最近、ヒトゲノム上にマップされたmiRNAの約半数以上は、様々な癌の発症と関連した染色体異常を起こしやすい"fragile site"に位置していることが明らかにされた。そこで、miRNAのヒトゲノム局在と我々のグループがゲノム不安定化部位として特定した染色体R/G-バンド境界との対応関係を明らかにするため、ヒト11番ならびに21番染色体長腕領域を対象にmiRNAのゲノム解析を行った。その結果、miRNAの約半数以上が染色体R/G-バンド境界ならびにその近傍に局在していることが判明した。また、miRNAが局在したゲノム不安定化部位に対応する染色体バンド境界について、染色体工学的手法を用いた機能解析を行った。具体的には、ヒト11番染色体をハムスター由来CHO細胞に導入したハイブリッド細胞を用い、ヒト11番染色体のバンド境界領域を対象にDNA複製タイミングの解析を行った。その結果、CHO細胞に導入したヒト11番染色体のR/G-バンド境界領域の複製タイミングは、対照として用いたヒト由来細胞系と同様にS期前半から後半に大きく変化していることが判明した。この結果、ヒト染色体バンド境界領域の複製タイミングプログラムは、染色体自身に本来備わった制御機構であることが示唆された。また、がんをはじめとする多因子疾患の発症と関連したヒト染色体の"バンド境界"について、その不安定化や恒常性維持の分子メカニズムに関する基礎知見を得ることができた。
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