研究概要 |
癌や造血器悪性腫瘍細胞では、IAP(inhibitor of apoptosis protein)ファミリーの発現が著しく高まっている。本研究ではこの点に着目し、血中抗IAPファミリー自己抗体の検出による、簡便かつ新たな癌診断法の開発と実用化を目指している。 本年度はまず、各種癌患者の血清を用い、抗IAP(Survivin, Livin, XIAP)自己抗体の陽性率を、既存の腫瘍マーカーや抗p53自己抗体のそれと比較検討した。その結果、抗Survivin自己抗体の陽性率は抗Livin、抗XIAP自己抗体のそれよりも明らかに高く、既存の腫瘍マーカーや抗p53自己抗体と比べても優位であった。そこで、この点を明らかにするため、発生母地のほとんどがポリープであり、前癌病変の設定が容易な大腸癌に着目し、大規模比較試験を企画した。そのため、試料バンクの作製に着手し、現時点で大腸癌150例以上、大腸ポリープ250例以上を収集し得た。また、本比較試験を行うために必要な、IAPファミリー3者のリコンビナント蛋白の作製も終了した。 今後、更なる試料の収集に努めるとともに、抗IAP自己抗体や既存の腫瘍マーカーおよび抗p53自己抗体の測定を実施し、最適なスクリーニング方法を結論づける。
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