研究課題
非意図的な生成物である多環芳香族炭化水素(PAHs)は環境中に蓄積し、ヒトは食品、大気・水、及び喫煙を介して体内に取り込んでいる。本研究では、妊娠期のPAHsへの曝露が、成長後の子の学習・情動機能に及ぼす影響とその毒性発現メカニズムを、マウスを用いたin vivo行動試験と、マウス脳の特定領域における遺伝子発現解析により解明することを目的とする。研究期間全体をとおして、代表例として2,3,7,8-四塩素化ジベンゾパラジオキシン(TCDD)の周産期曝露モデルを用い、周産期TCDD曝露によって惹起される行動異常がPAHsの受容体として知られるAh受容体(AhR)を介して起こるのか、そしてその曝露影響を行動レベルから組織・分子レベルで比較する事により、PAHsによる発達神経毒性影響のリスク評価に必要な基礎的知見を得る。すなわち、PAHsに共通したAhR依存的な毒性影響、ダイオキシに特異的な影響を明らかにすることを目指している。これまでに、ダイオキシン曝露による発達神経毒性影響は、学習機能と情動機能の両面に顕れること、低用量域での、用量依存性を伴わない神経毒性があることを明らかにしてきた。さらに昨年度に引き続き、ダイオキシンによるAhR依存的/非依存的神経毒性影響の検証を行うため、ダイオキシン曝露動物の作成を行い、解析を進めている。すなわちAhR遺伝子欠損マウス系統の母動物(ヘテロ動物)にTCDDを単回経口投与することで、経胎盤・経母乳でTCDD曝露をうけたAhR遺伝子マウス、欠損野生型、ヘテロ型マウスを作成、行動、組織、分子レベルでの検証を行っている。
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