研究課題/領域番号 |
21390187
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
平工 雄介 三重大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30324510)
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研究分担者 |
村田 真理子 三重大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10171141)
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キーワード | 繊維・粒子状物質 / 石綿 / ナノ素材 / 慢性炎症 / DNA損傷 / 8-ニトログアニン / 発がん / リスク評価 |
研究概要 |
繊維・粒子状物質は、吸入曝露により呼吸器で慢性炎症を惹起し、発がんや線維化などの健康障害をもたらす可能性が強く懸念される。したがって、これらの物質による健康障害のリスク評価法の開発が急務である。8-ニトログアニンとは、炎症条件下で生成される変異誘発性DNA損傷塩基である。我々は、種々の臨床検体や動物モデルで8-ニトログアニンが炎症関連がんの発生・進展の過程で生成することを世界に先駆けて明らかにした(Envrron Health Prev Med 2010.)。本年度の主な研究成果は以下の通りである。1)石綿を気管内投与したマウスの気道上皮細胞で、発がん性の強いクロシドライトがクリソタイルより有意に強く8-ニトログアニンを生成することを、免疫組織学的手法により明らかにした(AnnNYAcadSci2010)。さらにヒトの肺組織では、8-ニトログアニンの染色性が発がん性の強い角閃石系石綿量と有意に相関することを明らかにしている。以上の結果から、8-ニトログアニンは石綿の曝露指標および発がんリスクの評価指標として応用できる可能性が期待される。2)ナノ素材として産業界で使用されるカーボンブラックおよびカーボンナノチューブは、エンドサイトーシスにより肺上皮培養細胞に取り込まれて8-ニトログアニンの生成を誘導することを明らかにした。特にカーボンブラックについては、粒径によりその経時変化が異なるという興味深い知見を得ている。3)タイ肝吸虫感染ハムスターの肝内胆管において、組織の線維化に関わるマトリクスメタロプロテアーゼ-9の発現を介して活性窒素種の生成とDNA損傷をもたらす新しい分子機構を発見した(Int J Cancer 2010)。また、この動物モデルを用いて、抗酸化剤クルクミンが炎症関連発がんの予防に有効であることを明らかにしている(Int J Cancer 2011)。
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