悪性中皮腫発症におけるHDAC阻害剤による抗腫瘍効果を解明 様々の悪性中皮腫細胞株を入手し、それらに対するHDAC阻害剤の抗腫瘍効果を検討した結果、試験した悪性中皮腫細胞5種すべてにおいて、HDAC阻害剤による増殖抑制が認められた。次に、そのHDAC阻害剤による増殖抑制効果の詳細を検討するために、細胞周期解析を実施したところ、細胞周期の停止よりも、アポトーシスの誘導が起きていることが明らかとなった。更にこの悪性中皮腫細胞におけるHDAC阻害剤のアポトーシス誘導に対して、reactive oxygen species (ROS)のスカベンジャーであるN-acertyl cysteine処理を行ったところ、HDAC阻害剤により誘導されるアポトーシスが減弱したこと、また、HDAC阻害剤により実際にROSの産生が確認されたことから、このアポトーシス誘導にはHDAC阻害剤によるROSの産生誘導が強く関与していることが明らかとなった。 従来、HDAC阻害剤による抗腫瘍効果は、p21誘導に代表される細胞周期の停止が主たる作用と考えられているが、悪性中皮腫細胞ではROSの産生によるアポトーシス誘導が顕著であることから、悪性中皮腫でのROSの産生されやすさに着目した解析を実施中である。 また、正常細胞に対するHDAC阻害剤の効果や、nude mouseでのxenograftモデルにおけるin vivoでの悪性中皮腫細胞に対するHDAC阻害剤による抗腫瘍効果も現在解析中である。
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