研究概要 |
高齢者の視覚障害が将来のADL低下、要介護状態、死亡などの望ましくないアウトカムに与える影響については、とくにcommunity-basedな知見が不足している。本研究では、地域コホートの4年追跡調査を実施し、日本人地域在住高齢者集団における感覚器障害とQOL・ADLの関連性を明らかにすることを目的とした。本解析では、死亡ないしADL依存をアウトカムありと定義した。なお、ADL依存とは、施設入所、介護認定、Katzの基本ADLで一つ以上の依存、のどれか一つでも満たせばADL依存があったと考えた。 65歳以上の地域在住高齢者801名(男性337名、女性464名)を対象とする解析の結果、視力障害に関しては、男女ともにアウトカムとの関連が示唆された。男女統合解析の結果では、調整済リスク比とその95%信頼区間は、1.60(1.05-2.44)であった。なお、男女による交互作用の検討では、p=0.904と交互作用を認めなかった。 一方、聴力障害に関しては明確な性差がみられ、交互作用の検討では統計学的に有意(p=0.006)な性による交互作用を認めた。すなわち、男性ではアウトカムとの関連(調整済みRR=3.10,95% CI=1.43-6.72)が観察されたが、女性では関連がなかった。 上記のように、地域在住高齢者を対象とした本コホート研究の結果、視力障害、聴力障害といった感覚器の障害が、将来の死亡、ADL低下といった望ましくないアウトカムと関連することが示された。 これまでわが国で特に不足してきた、感覚器障害に関するCommunity-basedなエビデンスを示すことができたと考えている。
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