研究課題/領域番号 |
21390194
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
安達 修一 相模女子大学, 栄養科学部, 教授 (90129148)
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研究分担者 |
大山 正幸 大阪府立公衆衛生研究所, 衛生化学部, 研究員 (40175253)
辻野 喜夫 大阪府環境農林水産総合研究所, 環境情報部, 研究員 (80503953)
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キーワード | 大気汚染 / 黄砂 / 癌 / ぜんそく / 環境 |
研究概要 |
韓国(ソウル市)における黄砂サンプリング:2011年2月より5月末までの期間、高麗大学保健科学大学キャンパス(ソウル特別市城北区貞陵洞山1番地)屋上でハイボリウムエアーサンプラーによる大気粉じん採取を実施した。5月初旬にはスーパー黄砂が飛来し、これの採取に成功した。 黄砂試料の処理:韓国より冷凍輸送された試料(石英フィルター、テフロンフィルター)からPAH分析用、無機成分分析用および生物学的影響評価用の各試料を調製し、それぞれの担当者へ送った。 動物実験:大阪で採取した対照粒子(夏季、冬季)と黄砂粒子の経気道肺内投与実験を継続し、対照粒子投与ラットについては解剖と組織標本作成を完了し、顕微鏡による観察を行っている。韓国で採取した黄砂粒子のラット経気道肺内投与を実施した。急性死亡例はなく観察を継続している。 粒子の細胞に及ぼす影響の検討:黄砂、中国の砂漠の砂を分級して作られた「黄砂試料」、3-ニトロベンズアントロン(NBA)をコーティングした「黄砂試料」に対するマクロファージの活性酸素反応を調べた。黄砂試料やシリカでは常に量反応関係が保たれ、NBAで反応が増強した。3月黄砂は肉眼的に茶色く、付着する大気汚染物質量が相対的に少ない。5月黄砂は肉眼的に黒く付着物質が相対的に多い。これらの結果は、粒子の付着物がこの反応を修飾することを示唆する。また、5月黄砂は対照の5月大気粉塵と類似の反応性であり、光化学スモッグ注意報発令日の黄砂試料の「光化学黄砂」では反応が弱かった。尚、夏と冬の大気粉塵も常に量反応関係は逆転しているが、値は低い。これらの結果は、飛来黄砂に対するマクロファージのスーパーオキサイド反応は、黄砂自体より付着する大気汚染物質の影響が強く関与することを示唆する。また、少量の投与では5月黄砂は最も反応が強く、5月大気粉塵の少量投与での反応性は相対的に低かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の3年次にあたり、採取した材料についての生物学的影響評価に務めた。動物実験では、予算配分の不確実性を考慮し、開始時期を見合わせた関係で予定よりも数ヶ月の遅れが生じているものの、最終年度内に実験は完了できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた研究協力者が海外での勤務となった関係で、一部(変異原性)に実施不能な項目がある。しかし、これについては他の方法による評価(活性酸素酸性能)を行っており、成果も得られている。動物実験の成果と対比することで、当初の目的とした黄砂の成分と生物学的な影響の関連性に言及しうる。
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