研究課題/領域番号 |
21390195
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
川西 正祐 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (10025637)
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研究分担者 |
馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (30263015)
及川 伸二 三重大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (10277006)
大西 志保 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (80511914)
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キーワード | DNA損傷 / 発がん機構 / 幹細胞 / 8-ニトログアニン / 8-oxodG / バイオマーカー / 一酸化窒素 / 炎症 |
研究概要 |
感染・炎症は極めて重要な発がん要因であるが、共通の包括的な分子機構は未だ明らかではない。がんの発生および進展に至る過程を解明する上で、幹細胞/前駆細胞に蓄積したDNA損傷の解明は極めて重要である。 ビルハルツ住血吸虫は膀胱癌を起こす原因となることが知られている。ビルハルツ住血吸虫感染患者の膀胱癌組織では、変異誘発性DNA損傷塩基の8-ニトログアニンと8-oxodGの生成は、正常組織に比べて有意に高いことが明らかとなった。さらに、ビルハルツ住血吸虫感染による膀胱癌と非感染者の膀胱癌を比較したところ、感染患者の膀胱癌組織では幹細胞/前駆細胞マーカーOct-4/3が発現し、8-ニトログアニンの局在と一致していた。 感染以外では、紫外線は皮膚癌のリスク要因となる。光エネルギーによる直接的DNA損傷や光増感物質による間接的な酸化的DNA損傷の関与が考えられているが、紫外線による皮膚炎症の関与も考えられる。紫外線誘発皮膚癌のモデルマウスを用いて検討した結果、UVB照射マウスの皮膚組織、特に表皮基底の核で、8-ニトログアニンが観察された。これは、幹細胞がん化の機構を解明するうえで、非常に興味深い。 近年利用が増えているナノ素材の吸入は、肺に慢性炎症を起こして発がんに関与する恐れがある。ナノ素材の一つ多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、実験動物に中皮腫を引き起こす。ヒト肺上皮由来の培養細胞にMWCTNを曝露して解析した結果、MWCNTはカベオラおよびクラスリンのエンドサイトーシスの機構により細胞内へ取り込まれ、iNOSを発現させ、一酸化窒素(NO)生成によりニトロ化DNA損傷を引き起こして発がんに関与する可能性が示された。 以上から炎症に伴うNO生成が、幹細胞にニトロ化DNA損傷をもたらし、その8-ニトログアニンががん予防のバイオマーカーになりうることが判明した。
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