研究概要 |
【背景・目的】日本の一般集団を対象に、認知的ソーシャルキャピタル(SC)と総死亡との関連を前向きに検討すること。 【方法】対象者は、宮城県大崎保健所管内の40~79歳の国民健康保険加入者全員(54,996名)を対象とする平成6年のベースライン調査に回答した52,029名(回答率:95%)のうち、ベースライン調査までに国民健康保険から脱退した者(775名)、住所情報不明者(67名)を除いた51,187名である。 ベースライン調査にて、「あなたが、日常生活において、大切だと思うものは何ですか。次の中から大切だと思われる順に3つ選んでください。」という質問に対して、第1位に「家族」と選んだ人の割合を、684の行政区ごとに計算し、その地域の認知的SCとした。選択肢は、(1)仕事(2)家族(3)健康(4)友人(5)金銭(6)趣味(7)名誉(8)地位(9)余暇(10)その他、である。地域の認知的SCを四分位に分類し、各四分位(Q1)の死亡リスクを性、年齢、BMI、飲酒習慣、喫煙習慣、学歴、運動習慣、配偶者の有無を調整したCox比例ハザードモデルより算出した。 【結果】「家族」と答えた人は9,058名であった。地域の認知的SCは、中央値17.37%(IQR,14.86%-20.34%)であった。14年間(平成7年1月1日~平成20年3月31日)の追跡で、8,997名の死亡が観察された。地域の認知的SCと死亡リスクは、負の関連を示していた。多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は、Q2 0.99(0.94-1.05), Q3 0.97(0.92-1.03), Q4 0.92(0.87-0.97)と有意に低下していた(p for trend=0.040)。 【結論】家族を大切に思う人が多く住む地域では、死亡リスクが低下することが観察された。
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