胎児期の適応メカニズムを踏まえた、生活習慣病発症の遺伝・環境要因モデルの構築を研究目的とした。そのために、大規模双生児家系長期縦断データベースを構築し、単胎児で定説となっている胎内環境(Fetal Origins of Adult Disease)仮説、あるいはDevelopmental Origins of Health and Disease (DOHaD)仮説が双生児でも成立するか検証する。 関連文献を網羅的に収集、整理した。次いで、人口動態統計を用いて、多胎の出生時体重・妊娠週数の推移を把握した。多胎妊娠では、単胎妊娠に比較して妊娠期間が短く出生体重が小さいため、胎児は低栄養状態にある。多胎新生児の55%が早産、70%が低出生体重児であり、単胎児の約10倍のリスクである。しかし、同一の妊娠期間や出生体重では多胎児は明らかに予後良好であり、特に子宮内頭囲発達(神経発達)の遅れが小さい。単胎児と異なる子宮内適応メカニズムも想定されうる。 今年度は、今まで東大附属中等教育学校に蓄積された調査票の情報状況を把握・入手し、データリンケージが可能で分析に耐えるデータベースの構築を目指した。その流れとして、1.60年間に渡る調査票はデータの記入形式が統一されていないので、すべてに共通している必要項目(出生体重、妊娠期間など)を確認した。2. 1980年入学志願以前の古い調査票データ、在学時データは紙媒体のまま保管されており、特に初期のものではその劣化が著しいので、必要項目をコピーまたは転記した。3.入手したデータを入力し、データベース化している。 今後は、今回整備した大規模双生児家系データだけでなく、長期縦断データの充実(卒業生の第4回の追跡調査)や精度の高いマーカー(周産期の詳細な記録、生化学マーカー、血圧、生活習慣病既往歴など)の完備を行い、上記の仮説の検証分析を行っていく。
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