本研究では、患者ニードの把握に基づいた個別的な包括的ケアを提供可能とするような支援システム、中でもわが国の医療システムを考え、看護師と医師との協働による、多職種コラボレイテイブ・ケア・アプローチを開発することを目的とする。 平成21年度は、がん患者のニードを評価するための方法を確立するために、オーストラリアで開発されたThe short-form Supportive Care Needs Survey (SCNS-SF34)の日本語版を作成し、計量心理学的手法にて標準化を行う研究に着手した。具体的には以下を行った。 1. SCNS-SF34日本語版の作成 SCNS-SF34は、がん患者のニードを評価するために開発された34項目から構成される自己記入式の調査票であり、がんに関連して生じる5つの次元のニード(1.身体状態および日常生活、2.医学的な情報、3.ケアや援助、4.心理的側面、5.対人関係におけるコミュニケーションに対するニード)を評価可能である。具体的な手順としては、まずback translationの手法にて、日本語版を作成した。 2. SCNS-SF34日本語版の標準化 がん患者を対象として、SCNS-SF34日本語版の信頼性、妥当性を検討するために、乳がん患者を対象として本質問紙を施行するとともに、QOL、精神症状との関連を検討するために、あわせてEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ-C30 (EORTC QLQC-30)、 Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS)も施行した。目標症例数は400名であるが、本年度中に108名の患者の参加が得られた。 調査に際しては、適格患者を対象として、文書にて本研究の目的、方法などについて説明を行うとともに、本研究への参加に同意が得られた場合は、同意書に参加者本人の署名をしてもらった。
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