本研究では、患者ニードの把握に基づいた個別的な包括的ケアを提供可能とするような支援システム、中でもわが国の医療システムを考え、看護師と医師との協働による、多職種コラボレイティブ・ケア・アプローチを開発することを目的とする。 平成22年度は、計量心理学的手法にて、前年度に作成された、がん患者のニードの評価方法であるThe short-form Supportive Care Needs Survey(SCNS-SF34 : 1.身体状態および日常生活、2.医学的な情報、3.ケアや援助、4.心理的側面、5.対人関係におけるコミュニケーションに対するニード、の5つの下位尺度)日本語版の標準化を行った。 具体的には、SCNS-SF34日本語版の信頼性、妥当性を検討するために、乳がん患者408名を対象として本質問紙を施行するとともに、QOL、精神症状との関連を検討するために、あわせてEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ-C30(EORTC QLQC-30)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を施行した。その結果、ほぼ原版同様の5つの因子構造が再現されるとともに、5つの下位尺度のクロンバックアルファ係数は0.85以上であった。また、全体のニードの高さと不安・抑うつ、QOLの間に中等度以上の有意な関連が示された。以上より、SCNS-SF34日本語版は高い信頼性、妥当性を有することが示された。 なお、調査に際しては、適格患者を対象として、文書にて本研究の目的、方法等について説明を行うとともに、本研究への参加に同意が得られた場合は、同意書に参加者本人の署名をしてもらった。
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