本研究では、患者ニードの把握に基づいた個別的な包括的ケアを提供可能とするような支援システム、中でもわが国の医療システムを考え、看護師と医師との協働による、多職種コラボレイティブ・ケア・アプローチを開発することを目的とした。 最終年度は、がん患者のニード評価方法The short-form Supportive Care Need Surveyを用いて抽出された乳がん患者のニードを元に、多職種によるコラボレイティブ・ケア・モデルとして、看護師が中心となり、適宜他の医療スタッフと連携をとりながら、患者の個別的なニードに対処する介入法の有用性を検討する臨床試験を実施した。 対象は術後乳がん患者で化学療法あるいは内分泌療法受療中の成人患者とし、27名の参加を得た。対象者の平均年齢は55+10歳(範囲32-72歳)であり、78%が既婚者、93%が12年以上の教育経験を有し、22%がフルタイムで就労していた。がんの臨床病期はII期が最も多く52%を占め、I期の37%が続いていた。がん治療に関しては、抗がん剤治療を受けているものが最も多く78%であり、内分泌療法55%、ハーセプチン12%と続いていた(重複回答)。 実際の介入テーマは患者との話し合いで決定されたが、平均1.6個、中央値で2個のニードが取り扱われた。最も取り扱われる頻度が高かったものは再発不安で46%であり、家族との関係23%、がん治療による副作用20%、疼痛20%と続いていた。原則として介入(面接)の回数は計4回とし、介入を通して自身のニードの解決に結びつくような問題解決技法が学べるような内容も含めた。 介入前後のアウトカムの比較においては、再発不安(P=0.19)と医療に対する満足感(P=0.18)に関しては有意な変化はみられなかった。一方、一部感情状態やQOLについては有意な改善が認められた。
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