研究概要 |
本年度は、縦断調査を継続しながら、血清β_2ミクログロブリン(β_2-M)濃度に影響する因子を分析し、高齢者の血清β_2-M濃度がライフスタイル等の修飾により可変なものかどうかを明らかにする計画であった。 1.縦断調査の継続 草津縦断研究における悉皆調査(65歳以上1,952人が応答)と医学健診(同611人が受診)を実施した。 2.血清β_2-Microglobulin(β_2-M)濃度に影響する因子についての横断分析 一般地域住民(新潟県Y町で2004年に実施した基本健康診査の受診者1,402人)における血清β_2-M濃度はどの年齢階級においても男女差は見られず、60歳以降は急峻に上昇していた。草津縦断研究の70歳以上高齢者539人および都健康長寿医療センターの縦断研究(TMIG-LISA)の対象コホート65歳以上高齢者1,081人のデータを用いた横断分析では、血清β_2-M濃度は腎機能指標(Cr,Cystatin C,推定GFR,尿蛋白の有無)と最も強く関連していたが、重回帰分析法により腎機能指標など重要な交絡要因を調整しても、老化・栄養指標(年齢,BMI,Hb,A1b)や炎症指標(CRP,WBC)あるいは血清脂質(T-Chol,HDL-Chol)とそれぞれ独立して関連していた。興味深い点は、BMI,Hb,AlbおよびT-Cholとは負の相関性が、CRPやWBCとは正の相関性があったことである。ライフスタイルとの関連では、性、年齢、調査地域を調整しても、魚介類や卵の摂取頻度、喫煙・飲酒習慣、さらには身体組成・機能(骨格筋%,通常歩行速度)とも関連していた。心血管系疾患のpreclinical diseaseとしての動脈脈波伝播速度(baPWV)とも有意に相関していた。 血清β_2-M濃度は食生活や身体活動により修飾可能であると推察され、今後、介入研究によりその検証を行う必要がある。
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