本研究は、(1)トランスクリプトームおよびプロテオーム解析による年齢依存性生体分子の検索・同定(2)年齢依存性生体分子の生理的機能や加齢・老化・疾患との関連の解明(3)年齢依存性生体分子の定量法の確立を目的として企画した。M-LPは、活性酸素の代謝に関わるマウス腎の新規タンパク質であり年齢依存性発現を示す。これまでの成果により、M-LP遺伝子の発現調節には新規転写抑制因子Rhitが関与することが明らかになった。そこで、今年度はRhitについて以下の研究を実施した。 1. マウスRhitにより発現調節を受ける遺伝子群の同定 TCMK-1細胞のRhit遺伝子をsiRNAによりノックダウンし、発現量の変化する遺伝子群をPCR Arrayを用いて解析した。その結果、酸化ストレス関連の複数の遺伝子において発現量の変化が認められた。今後、Rhitから各遺伝子に至る経路についての詳細な解析を行い、Rhitの生理的機能について明らかにしていく予定である。 2. ヒトRhitの発現量と年齢との相関の解析 連携研究者(島根大・医学部・竹下)より供与を受けたRNA試料を用いてヒトRhitの発現量と年齢との相関を調べたところ、加齢に伴って減少する傾向が認められた。したがって、ヒトRhitは法医学的年齢推定の指標となる可能性が示された。 3. ヒトRhitの転写調節機構の解析 ヒトRhit遺伝子のプロモータ領域について、ルシフェラーゼアッセイ、ゲルシフトアッセイなどの解析法を用いて転写調節因子の同定を試みた。その結果、2種類の転写因子(促進因子1、抑制因子1)の関与が認められた。
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