研究概要 |
本研究は、(1)トランスクリプトームおよびプロテオーム解析による年齢依存性生体分子の検索・同定 (2) 年齢依存性生体分子の生理的機能や加齢・老化・疾患との関連の解明 (3) 年齢依存性生体分子の定量法の確立 の3項目を目的として実施した。平成25年度に得られた研究成果を以下に示す。 (1) 年齢依存性生体分子の検索・同定・・・活性酸素の代謝に関わるマウス腎の新規タンパク質M-LPは年齢依存性生体分子である。そこで、M-LPH遺伝子の発現を抑制し、この操作によって発現量が変動する酸化ストレス関連遺伝子群をPCRアレイ法により検索した。その結果、発現が有意に促進される遺伝子(TNF, TRAIL, Fasなど)および発現が有意に抑制される遺伝子(FADD, CASP2, TRAF3など)を同定した。 (2) 年齢依存性生体分子の生理的機能や加齢・老化・疾患との関連の解明 ①M-LPH遺伝子内のRhitH結合部位の同定 RhitHは、M-LPH遺伝子のintron 1に含まれるTtk binding siteに結合して発現抑制を行うことを確認した。②遺伝子発現抑制に関与するKRAB boxやzinc fingerドメイン内のアミノ酸置換を惹起する非同義置換型SNP(9座位)に着目し多集団における分布調査と遺伝子型―活性相関解析を実施した。SNP p.Cys461Serなどは発現抑制効果を減弱させたが、これらのfunctional SNPsは多集団においてmono-allelicな分布を示した。従って、RhitHの機能を低下させるSNPは遺伝的多様性に乏しいことが明らかとなった。 (3) 年齢依存性生体分子の定量法の確立・・・リアルタイムPCR法によるRNAレベルでの遺伝子発現解析法をM-LPHおよびRhitH遺伝子のそれぞれについて確立し、胎児及び成人の臓器における発現解析を行った。RhitHは多様な臓器に局在し、成人と胎児の発現量に大きな差は認められなかったが、M-LPHは肝、腎、脳などのミトコンドリア代謝が活発な臓器で多く発現し、成人における発現量が胎児における発現量を大きく上回っていた。
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