研究課題/領域番号 |
21390217
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
北村 修 金沢医科大学, 医学部, 教授 (70266609)
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研究分担者 |
王 〓 金沢医科大学, 医学部, 講師 (60555051)
武市 敏明 金沢医科大学, 医学部, 助教 (90460360)
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キーワード | 覚醒剤 / 薬物自己投与 / 酸化ストレス / 神経細胞 / グリア細胞 / 小胞体ストレス |
研究概要 |
本研究は、薬物自己投与による薬物依存動物モデルの中枢神経系障害において発生するタンパク質の障害または遺伝子発現を解析することにより、覚醒剤(メタンフェタミン)濫用の法医病理学的診断を向上させることを目的とし、酸化ストレスに基づく神経細胞障害及びグリア細胞の反応に関与したメカニズムに着目して解析する。 本年度は、覚醒剤依存者の投与パターンについてある程度再現性がある、少量のMETHを投与した後の大量投与による神経毒性への影響について、ラットの脳における小胞体ストレス蛋白質の発現、酸化障害及びアポトーシスとの関連を中心に解析した。 メタンフェタミンを一定期間に少量投与した場合、特定の濃度(1mg/kg)では、細胞障害を抑制する機能を持つ小胞体ストレス蛋白質の発現を示すものの、酸化障害及びアポトーシスに関する経路には影響を与えなかった。そこで、この濃度で前投与した群(前投与群)と生食水投与群について、それぞれ神経毒性を引き起こす大量のメタンフェタミンを投与して、少量前投与の影響を観察した。その結果、前投与群では、細胞障害を抑制する機能を持つ小胞体ストレス蛋白質はさらに増加し、抗酸化酵素が誘導され、アポトーシスの経路については抑制的であることが認められた。さらに、神経細胞障害やグリア細胞の反応は認められなかった。一方、生食水投与群では、アポトーシスを促進する小胞体ストレス蛋白質が増加し、酸化障害及びアポトーシスの経路が活性化され、神経細胞障害やグリア細胞の反応が認められた。 覚醒剤依存者の投与パターンに類似した少量投与における小胞体ストレス蛋白質の発現は、酸化障害及びアポトーシスに関する経路に影響を与えることが明らかとなった。さらに、小胞体ストレスの機能は、神経細胞障害の抑制のみならず、薬物依存のメカニズムと関連する可能性が考えられる。
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