嚥下に関係する高次脳機能部位である島皮質を効果的に活性化する方法が嚥下に関係する高次脳機能の活性化する方法であり、究極の摂食嚥下改善法と考えられる。温度感覚のうち温度識別感覚の求心路の最終地点の一つは大脳島皮質である。したがって温度識別感覚刺を効率的に刺激することが効率的に高齢者の低下した嚥下機能を改善するものと考えられた。温度識別感覚の末梢受容体は温度感覚受容体であり、そのアゴニストは食品の香辛料成分であるカプサイシンやメンソールである。これらのアゴニストを利用して嚥下に関係する高次脳機能の活性化を図るという方法が考えられる。ところがこれらの香辛料には当然のことながら好き嫌いがあり、嫌いな人にこれらの香辛料を使用することはたとえ有効な方法であってもコンプライアンスの面で問題がある。そこでほとんど無味無臭の温度感受性受容体(TRPV1)アゴニストである辛みのない唐辛子CH19-甘の辛味成分であるカプシエイトを抽出し、これを用いて、嚥下反射の遅延した嚥下障害高齢者に対して、カプシエイトが嚥下反射を改善するか検討した。辛みのない唐辛子であるCH-19甘の株を栽培し、カプシノイドであるカプシエイトを有機溶媒にて抽出する。嚥下障害のある患者12人(男性7人、女性5人)年齢63-93歳(平均年齢79.8歳)。嚥下反射は、経鼻細管を用いた簡易嚥下誘発試験で、嚥下潜時をカプシエイト溶液を用いて評価した。するとカプシエイトの用量依存性に嚥下反射を改善することが分かった。これらの濃度のカプシエイトにおいては高齢者に辛みを惹起することはなかった。したがってカプサイシン類縁体であるカプシエイトがコンプライアンスのよいTRPV1を介する島皮質刺激嚥下改善剤であることが示唆された。
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