研究概要 |
本研究は慢性疲労症候群(以下CFS)患者に対して、『漢方治療と認知行動療法を融合した集学的な治療戦略を確立』するための研究である。 1. まず漢方治療に関しては、CFS患者22人(CFS17人、"CFS+二次的精神疾患者"5人)を対象として、治療効果をさらに詳細に検討した。PS (perforrmance status)スコアで有意な改善が見られ(著明改善27%、改善41%)、WHO-QOL26健康調査票を用いた評価では、「総合QOL」,「身体的領域」、「全般的な生活の質」において有意な改善がみられたが、「心理的領域」、「社会的関係」、「環境の領域」での改善に有意差は見られなかった。この領域の改善に認知行動療法の有用性が期待できると考えられた。 2. 「慢性疲労症候群のための認知行動療法」に関しては、CFS患者7名を新たに加え、引き続き症例の集積を行っている。「慢性疲労症候群のための認知行動療法」において、現在7名中、5名が2期目、2名が3期目に入っている。我々はCFS患者の認知・行動面の特徴を、認知的な判断基準(自己基準-他者基準)、行動のパターン(活動の回避-過活動)、認知・行動を意識化できている程度(意識-無意識)の3次元の軸によって捉えている。その中で、認知・行動を意識化できている程度(意識-無意識)の軸が、プログラムの継続、治療効果に直接的に影響することが明らかとなった。認知・行動を意識化できない患者は、治療の必要性や効果を実感できていなかった。一方、意識化できている患者は、疲労回復を妨害している認知や行動に気付く効果が得られている。今後は治療効果データの集積を行い、データの解釈と解析を進める。それらの結果をもとに、認知・行動を意識化できない患者へのプログラムも含めて、プログラムの改編、パッケージ化の作業を行う。
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