研究課題
平成21・22年度の本研究において、十全大補湯が大腸の固有粘膜層に存在する既報のインターフェロン(IFN)産生細胞とは異なる発現パターンを持つ単球系細胞のToll Like Receptor 4(TLR-4)依存かつMyD88非依存のシグナル経路に作用し、内在性IFN産生能を高める事を明らかにした。平成23年度はこれまでの研究成果を踏まえ、実際のウイルス感染における十全大補湯の効果を検討する目的で、インフルエンザウイルス(Inf)を用いた実験を行った。これまでに検討したTLR-4およびMyD88ノックアウトマウスのワイルドタイプがC57BL/6マウスであることから、比較を容易にするために同マウスを用いた。その結果、十全大補湯投与C57BL/6マウスの生存率は比較として用いた補中益気湯投与C57BL/6マウスよりも低く、抗Inf効果は微弱であった。漢方薬の効果はマウスの系統に左右され、Th1優位のC57BL/6マウスでは十全大補湯の効果が見られなかった可能性もある。一方補中益気湯はBALB/cを用いた研究で、Infに対する延命効果および感染マウス肺中のIFN早期産生、肺損傷の軽減が既に報告されているが、メカニズムの全容は解明されていない。そこで、マウスの系統を問わず抗Inf能を有する補中益気湯について詳細な機序解明を進めることにした。C57BL/6マウスに対しても補中益気湯は、Inf感染マウスの延命および感染マウス肺中のInf増殖抑制、IFN-α活性増加が示し、Defensin family遺伝子発現増加も認められた。またIn vitroにおける添加実験ではVirionに対して直接不活性化はせず、補中益気湯-Inf複合体を形成することで抗Inf作用を発揮する可能性が示唆された。さらにインビトロの実験からは、補中益気湯が感染初期の吸着侵入過程を阻害することを明らかにした。
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BMC Genomics
巻: 13:30
10.1186/1471-2164-13-30