研究概要 |
1)肝細胞癌患者データベースの構築 抗腫瘍効果はRECISTにとらわれず生存の延長をエンドポイントに評価していく必要がある.有効性や安全性と関連するバイオマーカーを明らかにするには,各種臨床パラメーターをデータベース化する必要があり,現時点までに我々は附属病院に入院する肝細胞癌患者のデータをほぼ全てデータベース化するシステムを構築した.現在精力的にデータの収集を行っており,いずれ血管新生阻害薬のみならず動脈塞栓術やラジオ波焼灼療法等の治療効果を早期に推定し得るバイオマーカーが明らかになることと思われる. 2)肝細胞癌患者における血管新生関連因子の発現の検討 肝細胞癌における血管新生関連因子の発現を検討するため,当科にて治療を施行する肝細胞癌患者より癌組織及び背景肝組織をインフォームドコンセントを取得した後採取し,そこからmRNAを抽出し,既知の血管新生因子(VEGF,VEGFR,FGF,FGFR,EGF,ERBB,PDGF,PSGFR,HIF,Angiopoietin,Tie2)及びoncogene・増殖関連マーカー(c-Myc,c-Fos,c-Jun,c-JunB,c-JunD,Ki67,PCNA)についてreal-time quantitative PCR法にて解析を行った.その結果血管新生に強く関連する因子としてc-JunとHIF1αが同定された.また腫瘍による血管新生の遷延に起因する血管侵襲に関連する因子としてVEGFR1,ERBB3,PDGFB,HIF2αが同定された.さらにはタンパク質レベルでも発現が亢進していることを,肝細胞癌の手術検体を用いた免疫染色法により確認している.実際の臨床検体におけるこれら血管新生,並びにその後に続く血管侵襲に関連する因子を具体的に明らかに出来たことは,肝細胞癌の新たな治療標的をクローズアップし,今後の肝細胞癌の治療薬の選択並びに治療法の開発に多大な影響をもたらす可能性があり,テーラーメイド医療の観点からも非常に意義のあるものであると考える.
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