研究概要 |
(臨床)肝細胞癌に対する血管新生阻害薬として2009年5月よりソラフェニブが保険診療による投与が可能となった。現在投与中の52例に関して、われわれが既に構築した肝細胞癌患者データベースを用いて安全性および有効性の検討を行った。抗腫瘍効果が計測可能であった45例ではCR/PR/SD/PD/NEがそれぞれ0/1/22/14/8で病勢コントロール率は51.1%であった。安全性に関しては、開始4週間以内に開始前と比べて2倍以上のトランスアミナーゼ上昇を認めた症例が14例認められ、安全性を確保しつつ、より効率のよい治療を行うため、適切なバイオマーカーの設定が重要であると思われた。さらに症例を増やし、引き続き検討中である。 (基礎)2006年1月から2009年10月までに患者同意のもと採取された肝細胞癌針生検検体24例(男性19女性5例)の26結節からRNAを抽出し、血管新生関連遺伝子についてQuantitative real-time RT-PCRによりmRNA発現解析を行った。現在のところ解析が終了している遺伝子は以下のとおりである。VEGFA,VEGFB,VEGFC,VEGFD,PlGF,VEGFR1,VEGFR2,VEGFR3,FGF1,FGF2,FGFR1,FGFR2,FGFR3,FGFR4,EGF,ERBB1,ERBB2,ERBB3,ERBB4の計19種。これらの遺伝子のmRNA発現の程度と臨床背景因子(病理学的分化度・CTアンギオグラフィーによる腫瘍濃染像・血管侵襲)の比較を行った。上記検討した遺伝子のうち、FGFR4、ERBB3は中分化から低分化の腫瘍で有意に発現が亢進していた。また、VEGFA、VEGFR1、FGFR3は血管侵襲陽性の症例で有意に発現が亢進していた。CTアンギオグラフィーによる腫瘍濃染像と有意に発現が関連している因子はみられなかった。
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