研究概要 |
(臨床)血管新生阻害剤ソラフェニブ治療における画像評価および腫瘍マーカーによる早期治療効果予測について検討した。Dynamic CTおよび腫瘍マーカー(AFP,PIVKA2)で治療開始前および治療開始早期(3-6週)に治療効果判定を行った54例を解析対象に、われわれが既に構築した肝細胞癌患者データベースを用いて検討を行った。modified RECISTによる早期治療効果判定はCR/PR/SD/PDがそれぞれ3/4/29/18であり、SD群の全生存期間が11.6ヶ月であるのに対し、CR+PR群では1名を除いて生存しており有意に長かった。(p=0.0422)長かった。なお、CR+PR群の観察期間中央値は19.9ヶ月であった。また、治療開始早期のAFP上昇が20%以上の群の全生存期間は5.0ヶ月であり、20%未満の群の16.7ヶ月に比べて有意に短かった(p=0.0002)。以上からDtnamic CTにおけるmodified RECISTとAFPはソラフェニブの早期治療効果予測に有用であると考えられた。 (基礎)患者同意のもと採取された肝細胞癌針生検検体26例(男性20女性6例)の26結節からRNAを抽出し、血管新生関連遺伝子についてQuantitative real-time RT-PCRによりmRNA発現解析を行った。前年度に解析した19遺伝子に加え、PDGFA,B,C,D,PDGFRα,β,HIF1α,2α,Ang1,2,Tie-2,c-myc,c-fos,c-jun,JunB,JunD,Ki67,PCNAの全37遺伝子につき解析を終了した。これらの遺伝子のmRNA発現の程度と臨床背景因子(病理学的分化度・CTアンギオグラフィーによる踵瘍濃染像・血管侵襲)の比較を行った。上記検討した遺伝子のうち、PDGFA,B,HIF1α,2α,Ang1,PCNAは中分化から低分化の腫瘍で有意に発現が亢進していた。また、PDGFB,C,HIF1α,2α,c-fos,PCNAは血管侵襲陽性の症例で有意に発現が亢進していた。また、CTアンギオグラフィーで腫瘍濃染した症例ではHIF1α,c-Jun,Ki67の発現が有意に亢進していた。今回検討した因子ではHIF1aのみが悪性度や血管侵襲に関与しており、HIF1aα発現は血管新生のsurrogate markerになりえ、発現の高い症例では抗血管新生を標的とした分子標的療法が奏効する可能性が示唆された。
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