研究課題
本研究では、肝癌細胞の有する「治療抵抗性」の分子基盤の一つである"細胞死抵抗性"を担う責任分子群を同定することを目的とする。ここで強調すべき点は、責任分子群の同定には、遺伝子・蛋白質発現に加え、蛋白質機能解析が不可欠であることである。その意味から、機能を制御する翻訳後修飾、とりわけ燐酸化の解析は重要である。そこでヒト肝癌細胞株に細胞死を誘導するために酸化ストレス刺激を加え、刺激前後でcell lysateを調整して2次元デイファレンシャル電気泳動を施行した。さらに蛋白質発現や燐酸化を解析するために特殊染色を行い、蛋白質スポットから質量分析装置にて燐酸化蛋白質を同定した。複数の細胞株では酸化ストレス刺激に対する感受性が異なっていたが、最も抵抗性を示すHepG2細胞において刺激後に燐酸化スポットが約30個認められた。燐酸化が有意に変動する蛋白質の内訳は、転写因子、細胞骨格や分子シャペロン関連蛋白質であり、2次元電気泳動+ウエスタンブロットにてそれらの変化を確認した。また、刺激前後で遺伝子発現の網羅的解析を行ったところ、刺激後1時間、3時間で1.5倍以上の発現亢進を認めた遺伝子数はそれぞれ約600個、約700個であり、それらには細胞増殖、細胞死、IFN作用を担うシグナル伝達分子が含まれていた。さらにネットワーク解析から、酸化ストレスにより燐酸化が変化することで機能が変化した蛋白質が、細胞死関連遺伝子を誘導することが示された。一方、ヒト肝癌組織とその非癌部組織を対象に同様の解析を行ったところ、癌部で非癌部に比べて燐酸化が増強あるいは減弱する蛋白質が約30種類同定された。肝癌細胞株での結果との対比から、共通した複数個の蛋白質が、肝癌細胞の細胞死抵抗性の候補責任分子として絞り込まれた。現在、siRNAを用いてこれら候補責任分子の機能的重要性を検討している。
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