研究課題
本研究では、「肝癌細胞の治療抵抗性の分子基盤」の1つである細胞死抵抗性を担う責任分子(群)を同定することを目標としている。責任分子の同定には機能解析が不可欠であるため、機能を制御する翻訳後修飾、特に燐酸化に焦点を当て、網羅的プロテオミクス分子差異解析から、細胞死誘導刺激下の肝癌細胞株で有意に燐酸化が変化する蛋白質を約30種類同定した。その中で、核小体に豊富に存在する37kDaの燐酸化蛋白質nucleophosmin(NPM)に注目し、1)発現を減弱させると細胞死抵抗性が低下すること、2) 分子標的治療薬により燐酸化は低下し、肝癌細胞はアポトーシスに陥ること、3)強制発現により増殖速度が亢進することなどを明らかにした。今回、ヒト肝癌組織23症例(HBV 5例、HCV13例、非B非C 5例)でNPMの発現を検討した。NPMならびにp-NPM(燐酸化NPM)は、癌部において非癌部より発現が有意に亢進しており、なかでもp-NPMは、腫瘍径の大きい例、多結節例、単結節周囲増殖型/多結節癒合型で癌部での発現が高い傾向があった。加えてNPMは、非癌部肝組織の活動性の高い例において有意に高値であり、p-NPM高値例は、再発までの期間が有意に短縮されていた。このようにNPM、とりわけp-NPMはヒト肝癌組織の形質と密接な関連があることが示唆された。次に、微量サンプルの翻訳後修飾解析を、高分離能で再現性よく行うことが可能な全自動2次元電気泳動装置を開発し、NPMにはリン酸化の程度の異なる複数のformが存在することを明らかにした。一方、患者血清を用いたELISAでは、NPM濃度は 肝癌において慢性肝炎よりも高く、 肝癌切除後に前値に比べ血清NPM値は低下していることから、新たなバイオマーカーとしての可能性も示された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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