研究概要 |
炎症性腸疾患(IBD)は疾患のプロトタイプを記億してしまった細胞、すなわち、移動可能な(mobile)腸炎惹起性記憶(メモリー)T細胞が生涯にわたって全身に播種した病態であるという独自の仮説に立脚し、記憶を'悪性'から'良性'へとコンバートする免疫学的メカニズムを明らかし、IBD根治につながる基盤的研究に挑んだ。 腸炎惹起性メモリーT細胞の生体維持機構の解明 Helicobacter hepatitcus(Hh)という代表的な腸炎惹起性腸内細菌はノトシステムを用いて実験で、単独では腸炎を発症しないことを見出した。このことから腸炎には複合的な腸内細菌の関与が指摘され、感染症のような単独菌説より、dysbiosis説を指示する結果となった。さらに、SPF下で腸炎を惹起させたマウス腸管粘膜より採取した腸炎惹起性T細胞をHhノトマウスに再移入した場合にも腸炎は再現できず、腸炎惹起性T細胞の維持にも複合的な腸内細菌の存在が必要であることを示唆した。 腸炎惹起性メモリーT細胞の加齢現象と緩解の関連性 腸炎惹起性メモリーT細胞の発達分化過程にこれまでTh1細胞とTh17細胞が関与し、それぞれが独立して支持分子の助けを借りて産生されると考えられて来たが、本研究で我々はin vivoでTh17→Th1細胞へ直線的に分化する経路が存在することを証明した(Sujino T,Kanai T,et al.Gastroenterology 2011.Kanai T,et al.Mucosal Immunol,2012)。以上、Th17細胞はそれ自体腸炎のエフェクター細胞ではなく、Th1細胞の幹細胞である可能性を提唱するきっかけとなった。したがって、これまで考えられてきたTh17細胞の二面性の複雑な性状を説明する好例として世界に発信することができた。
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