C型肝炎ウイルス(HCV)感染症は持続感染化して慢性肝炎から肝硬変、肝臓癌に至る疾患を引き起こす。特に遺伝子型1bかつ高ウイルス量症例では50-60%の治癒率であり、いまだ十分ではない。本研究では、臨床的に治療が困難な遺伝子型1bのC型肝炎ウイルスのウイルス感染性クローンを樹立することにより、治療抵抗性に関する遺伝子領域を解析し、遺伝子型1bHCVの治療抵抗性の分子機構を解明することを目標としている。21年度に構築した遺伝子型1bの感染性ウイルス粒子を産生する全長ウイルス構築を用いて感染性ウイルス産生を検討した。野生型構築に比べて、適合変異を導入した構築ではウイルス産生能の向上が観察できた。しかし、全長ウイルスゲノム導入細胞の継続培養ではウイルス感染細胞が徐々に減少し、2-3ヶ月の培養を経て上清中のウイルスがほとんど検出不能となった。従って、短期間のウイルス増殖実験は可能であるが、長期にわたる持続感染実験はいまだに困難である。そこで、全長ウイルスゲノム導入後、長期間培養した細胞をクローニングし、ウイルスゲノム持続複製細胞を樹立した。この細胞中ではウイルスゲノムが持続複製していたが、感染性ウイルスの産生はほとんど検出できなかった。また、遺伝子型1bのウイルスゲノムの一部を遺伝子型2aのJFH-1株の遺伝子に組換えたキメラウイルスゲノムを作製し、どの遺伝子領域が持続的な複製に重要かを解析した。その結果、NS3およびNS5b領域遺伝子の組換えでは複製が全く無くなるが、それ以外の領域は組換え可能であることが明らかとなった。23年度は解析をさらに進めて、遺伝子型1bのウイルス培養系の確立を目指す。
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