研究課題
エンドセリン-A受容体(ETAR)-lacZ/EGFPノックインマウスの解析により、心発生初期におけるETAR発現細胞群を一次心臓領域の亜集団として同定し、この細胞群が心流入路腹側から心筒の左側壁を上行して左心室と両心房の心筋に分化することを明らかにした。さらに、心臓の初期発生において、エンドセリンシグナルがERKリン酸化やTbx5遺伝子発現制御などに関与し、心室形成に役割を果たしていることを明らかにした。さらに、ETARを発現する神経堤細胞は、血管形成においては脳血管の発生期に、CD31+の内皮細胞とともに神経管に侵入し、B型PDGF受容体を発現する壁細胞へと分化することが示された。血管形成の細胞系譜と機構については、血管内皮細胞においてNotch活性化がHey1/2の発現を誘導、転写因子Id1のノックダウンがHey1/2およびEphrnB2の発現誘導を促進、Id1の過剰発現がNotchシグナルによる下流遺伝子の発現とId1自身の発現を抑制することを明らかにした。さらにマウス胚の脳血管新生とin vitro血管新生モデルにおける発現解析とともに、Id1-Notch間のクロストークが血管新生の時空間的制御や動静脈の分化に関与する可能性を示した。さらに、in vitroモデルにおける血管新生過程のイメージングとコンピューター解析により、細胞動態の不均一性や先端細胞の入れ替わり現象が明らかになるとともに、これによって新生血管の細胞の特性やNotchシグナルなどの因子の効果などがより詳細に解析することが可能になった。以上の成果は、心臓形成や血管新生の分子メカニズムや細胞系譜の新しい側面を明らかにするとともに、心血管系の再生治療開発の基盤形成に貢献すると考えられた。
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