研究概要 |
本研究において、エンドセリン-A受容体(ETAR)-lacZ/EGFPノックインマウスの解析と鳥類胚を用いた実験により、心血管形成に寄与する新たな細胞系譜の同定と領域特異的な細胞運命決定機構の解明を試み、以下の結果を得た。 1.心発生初期におけるETAR発現細胞群を一次心臓領域の亜集団として同定し、発生初期におけるETAR発現細胞群を心流入路に生じる一次心臓領域の亜集団として特徴的な動態を示すこと、エンドセリンシグナルがERKリン酸化やTbx5遺伝子発現を促進し心室形成に役割を果たしていることを明らかにした(Asai et al.,Development137:3823,2010)。さらに、マウス-ニワトリ胚キメラによる心臓形成過程の細胞系譜解析の系を確立し、in vitro培養系における心筋分化系を併せて細胞運命決定機構に関する検討を行った。 2.血管形成の細胞系譜と機構について、マウス大動脈リング標本を用いたin vitroモデルにおける血管新生過程のライブイメージングとコンピューター解析により、血管新生における細胞動態をモジュール化して評価するシステムを構築した。これにより、血管新生過程における細胞動態の不均一性や先端細胞の入れ替わり現象を明確に示し、細胞間相互作用によるシグナルの役割を明らかにした。 以上の成果は、心臓形成や血管新生の分子メカニズムや細胞系譜の新しい側面を明らかにするとともに、心血管系の再生治療開発の基盤形成に貢献すると考えられた。
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