研究概要 |
研究代表者らは、マウス及びヒトES細胞(胚性幹細胞)を用いて血管および心臓の分化再生研究を行ってきた。最近、免疫抑制剤サイクロスポリンAが強力な心筋及び心筋前駆細胞誘導効果を有することを明らかにした(Yan, Biochem Biophys Res Commun, 2009)。研究代表者らは京都大学再生医科学研究所・山中らにより報告された成体細胞由来の新しい多能性幹細胞iPS細胞の分化研究にいち早く取り組み、マウスiPS細胞から系統的に様々な心血管細胞を分化誘導することに世界に先駆けて成功した(Narazaki, Circulation, 2008)。本研究は、心筋再生に最適な移植細胞の誘導・純化・移植法の開発(seed開発)とそのseedを特異的に心筋へと誘導する因子・環境(soil)の解明を通じて、高効率な新しい心筋再生治療戦略、「Seed & Soil治療」の開拓・樹立を行うことを目的とする。平成22年度は、1)ヒトiPS細胞からの機能的心筋細胞の分化誘導に成功し、2)研究代表者らが見出したマウスES細胞におけるサイクロスポリンAの効果をヒト細胞においても確認し、ヒトiPS細胞からの心筋分化誘導効率を数倍改善することに成功した(以上Fujiwara, PLoS One, 2011)。また3)ES細胞/iPS細胞からの心筋組織シート作製法や4)ヒトiPS細胞からの高効率分化誘導法の開発と誘導心筋細胞の純化法を開発し特許申請を行った。このように研究対象をヒトiPS細胞へ広げながら心筋再生治療戦略の基盤技術の開発を着実な進捗を認めている。
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