本研究の目的は、心不全発症機序における細胞内分解経路の役割を明らかにし、新たな心不全治療標的分子を同定することである。特に本年度はリソソームにおけるDNAの分解の病態生理学的意義を検討した。昨年度作成し、圧負荷後7日後に心筋炎、拡張型心筋症様の表現型を示すことが明らかとなった心筋特異的DNaseII欠損マウスをその分子機序を明らかにするために詳細に検討した。まだ心機能低下という表現型が明らかではない圧負荷後2日において、既に炎症細胞の浸潤、サイトカインの誘導が認められた。電子顕微鏡を用いた観察では電子密度の高いデポジットが観察された。またDNAに対し染色性を示すピコグリーン染色により組織学的検討により心組織にはDNAの蓄積が明らかとなった。さらにDNA蓄積物はリソソームマーカー(LAMP2A)並びにオートファゴソームマーカー(LC3)陽性であった。従ってリソソームのDNA分解の欠如はオートファゴソームにおいてDNA蓄積を引き起こしさらに炎症を惹起したと考えられる。DNAはTUNEL陰性であったことよりミトコンドリア由来である可能性が高い、 次にDNAが炎症を惹起する機構を検討した。自然免疫に関与することが知られているTLR9の阻害薬をDNaseII欠損マウスに投与すると心筋炎、心不全の発症、炎症細胞に浸潤が抑制された。従ってTLR9依存性にリソソームで消化されなかったDNAが炎症を惹起すると考えられる。
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