研究概要 |
アンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体と、アンジオテンシンIIタイプ2(AT2)受容体が拮抗して血圧調節、心血管リモデリングに関与していることが次第に明らかにされてきたが、我々は、最近、AT1受容体が血管老化を促進し、AT2受容体が血管老化を抑制することを報告してきた。本研究においては、課題である新規アンジオテンシンII受容体調節物質の血管老化への関与を検討した。ATRAP(AT1 Receptor Associated Protein)過剰発現マウスより調整した血管平滑筋細胞では、アンジオテンシンII投与による老化が阻害されていたが、これはATRAPがAT1受容体のインターナリゼイションを促進することにより、AT1受容体を介したp53やp21の発現が抑制されるためと考えられる。我々は、この作用機構に加えてATRAPがAT1受容体のインターナリゼイションとは別に、calcineurin/NFAT(nuclear factor of activated T cell)経路をブロックすることにより、血管平滑筋の老化を減弱していることを報告した(Journal of Molecular and Cellular Cardiology, 2009, 47, 798-809)。次に、野生型マウス、ATIP (AT2 Receptor Interacting Protein)過剰発現マウスにX線照射を与え、SA-□-gal染色陽性細胞数を検討したところ、ATIP過剰発現マウスではSA-□-gal染色陽性細胞数が有意に少なく、血管障害による老化抑制にATIPが重要な役割を担っていることが示唆された。今後、AT1、AT2受容体との相互作用、更には独立した作用などについての詳細な検討を、シグナルレベルを含めて進めて行く。
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