アンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体が血管老化を促進し、タイプ2(AT2)受容体が拮抗して作用することにより、血管老化を抑制することを報告してきた。新規AT1受容体機能調節物質ATRAP(AT1 Receptor Associated Protein)の血管老化への関与を検討したところ、ATRAP過剰発現マウスより調整した血管平滑筋細胞では、アンジオテンシンII投与による老化が阻害され、ATRAPによるAT1受容体のインターナリゼイション促進、p53やp21の発現抑制に加え、calcineurin/NFAT(nuclear factor of activated T cell)経路をブロックすることにより、血管平滑筋の老化を減弱していることを報告した。一方、新規AT2受容体機能調節物質ATIP(AT2 Receptor Interacting Protein)過剰発現マウスにX線照射を与え、ATIP過剰発現マウスでは野生型マウスに比べ、酸化ストレスによる細胞傷害マーカーである8-OHdの低下とともに、SA-β-gal染色陽性細胞数が有意に少なく、ATIPが重要な役割を担っていることが示唆された。さらに、AT2受容体による抗老化作用のシグナルとしてユビキチンコンジュゲイティングエンザイムバリアントである、MMS2(methyl methanesulfonatesensitive 2)の作用を報告してきたが、AT2受容体機調節物質ATIP過剰発現マウスでは、MMS2の発現が増加していることを認めている。さらに経口投与可能なAT2受容体刺激薬Compound21(C21)が開発され、我々は、C21がマウスにおいて認知機能を増加させることを報告している。今後、C21を用い、AT2受容体の直接刺激と、ATIPにより血管老化抑制作用の詳細な検討を進めて行く。
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