アンジオテンシンII2型(AT2)受容体刺激は1型(AT1)受容体を介した血管平滑筋細胞老化促進作用に拮抗して作用するだけでなく、DNA修復因子のMMS2を直接活性化することにより、血管老化を抑制することを報告してきた。7回膜貫通Gタンパク結合型受容体の作用を調節するタンパクが注目されているが、我々はAT2受容体のC末端尾部に特異的に結合するAT2 receptor interacting Protein (ATIP)が血管細胞老化に及ぼす影響についてATIPトランスジェニック(ATIP-Tg)マウスを作製して検討を行った。野生型血管平滑筋細胞においてアンジオテンシンIIの連日刺激により時間依存性に老化細胞数や総細胞数における老化細胞の割合が増強したが、ATIP-Tg血管平滑筋細胞では、老化が有意に抑制された。同様の結果は、酵化ストレスによるDNA損傷の指標である8-OHdGの細胞内レベルでも観祭された。また、ATP-Tg血管平滑筋細胞ではSHP-1の活性化とともに、MMS2の発現の増加が認められた。X線照射により大動脈で誘導される老化関連βガラクトシダーゼ陽性領域や、8-OHdGレベル、MMS2の発現の増加を認めたが、この老化とDNA損傷の増加はATIP-Tgマウスの血管で有意に抑制された、MMS2の発現はATIP-Tgマウスではさらに増強していた。以上の結果より、ATIPが血管平滑筋細胞の老化を抑制する可能性が示唆された。このATIPの血管老化抑制作用に少なくともSHP-1の活性化による、MMS2の発現増加が関与していると考えられる。これらの研究に関連して、ATIPがインスリン抵抗性を改善する可能性が報告している。さらに経口投与可能なAT2受容体刺激薬Compound21 (C21)が開発され、我々は、C21がマウスにおいて認知機能を増加させることも報告している。
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