研究課題
血管壁における酸化ストレスは虚血性疾患の発症原因となるのみならずその病態を修飾する.我々は活性酸素種産生酵素NADPH oxidaseの1つであるNox4が血管内皮細胞・周皮細胞に強く発現することを報告し,生物学的意義について検討している.Nox4は発現量により活性酸素産生量が規定される.発現制御に最も重要な因子は低酸素刺激であった.代表的な低酸素関連転写因子であるHIF-1をknockdownしてもNox4の発現は抑制されず,逆にNox4を過剰発現すると正常酸素下においてもHIF-1タンパク質の発現が観察された.Nox4過剰発現によりHIF-1を分解誘導するPHD-2の発現が抑制されており,Nox4はHIF-1を介した低酸素応答を増強させると考えられた.これに一致し,内皮・周皮細胞にNox4を過剰発現してマイクロアレイを行うと,いずれの細胞においてもHIF-1制御分子群,血管新生関連分子群の発現が有意に増加していた.さらにNox4がミトコンドリアに局在し,ミトコンドリア膜電位を低下をさせ,NFkBの活性化を生じさせる(=炎症を誘導する)ことを明らかにした.これらの現象を個体で確認するため,内皮細胞ならびに周皮細胞特異的Nox4過剰発現マウスを用いて検討した.中大脳動脈閉塞による一過性および永久虚血の両者において,これらのマウスでは脳梗塞サイズが有意に拡大した.一方,大腿動静脈結紮による下肢虚血ではNox4過剰発現が血管新生に対して有利に働くことを我々および他のグループが相次いで報告した.以上,内皮細胞・周皮細胞におけるNox4の役割は血管新生誘導作用と考えられる.脳における急激な血管新生誘導は血液脳関門の破綻・血管内物質の脳実質内流失を引き起こすため脳梗塞が悪化する.バリア機構がない下肢血管ではNox4による血管新生反応が有利に作用すると結論づけている.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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