研究課題
心臓に発現するアデニル酸シクラーゼは自律神経刺激によって酵素活性を上昇させ、cAMPを産生して心機能を制御する。我々は、近年同定されたcAMP標的分子であるEpacの心臓限局型過大発現モデルを作成したが、本モデルにおける心機能変化に細胞内のリン酸化酵素がどのように関与するのか、分子メカニズムを検討した。EpacのサブタイプであるEpac1およびEpac2のそれぞれを心筋細胞特異的に発現させた。非刺激下ではどちらの過大発現モデルでも心機能に大きな変化は見られなかった。LPSをはじめとするエンドトキシンを与えると、野生種では心機能の低下が見られたが、Epac1過大発現マウスでは機能低下が抑えられていた。Epac1過大発現がどのようなメカニズムでエンドトキシンに対する保護効果を示すのかを、サイトカインがJAK・STAT系に及ぼす影響を中心に検討した。インターロイキン6(IL-6)投与は心筋細胞のSTAT3のリン酸を上昇させたが、Epac選択的cAMP誘導体はIL-6によるSTAT3のリン酸化を減少させた。Epac刺激によるSTAT3リン酸化抑制にはSTAT3のリン酸化を抑制するSOCS3の発現上昇が関与していた。また、βアドレナリン受容体刺激薬イソプロテレノールによる心筋細胞内のカルシウム濃度の上昇はIL-6刺激により低下したが、Epacを刺激することにより、この低下が抑制された。これらの発見から、自律神経系とサイトカイン系のシグナルが、細胞内リン酸化を通じてカルシウム制御をおこなう可能性が示された。これにより自律神経調節による心機能調節の新たな調節経路が示された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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