グレリンは、国立循環器病センターの研究グループにて発見された生理活性ペプチドであり、循環調節のみならず、心臓・血管などの保護や再生においても重要な役割を担うなど多彩な機能を有していることが明らかになっている。本研究では、疾患モデル動物等においてグレリンの新たな生理作用や病態生理的意義を明らかにし、診断・治療応用における新たな適応を見出すことを目的とする。本年度は、グレリン遺伝子欠損動物を用いて、これに心筋梗塞モデル作製することにより、内因性グレリンの心機能や心臓リモデリングにおける効果を検討し、冠動脈疾患における治療的意義を解析した。この結果、グレリンを欠損した動物では急性心筋梗塞後の生存率が有意に低下していることが明らかとなった。現在、その原因を解析するとともに心機能や心臓リモデリングにおけるより詳細な効果とその機序に関して検討を進めている。また、グレリンの意義を臨床的に検討する目的で血中グレリン濃度を検討した。グレリンの血中濃度は肥満・糖尿病で低下することが知られているが、その日内変動や食前食後の変動の生理的・病態生理的意義は不明である。そこで、これらの病態を有する患者において血中グレリン濃度測定を行いその分泌調節や病態との関連について研究を進めている。グレリンはその28アミノ酸のうち3番目のセリン残基がアシル化修飾をうけることで活性型となるが、従来までの測定法では非活性型も同時に測定しているため、今回新に活性型グレリンを測定することで従来法に比較してその臨床情報との関連に違いがあるかを検討中である。また、高脂肪食負荷前後でのグレリン濃度の違い(デルタグレリン)に関してもその意義を検討している。
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