研究概要 |
喘息や喘息と関連するIgE反応性や気道過敏性に影響を与える遺伝的な影響についての検討から、喘息や気道過敏性に関連する遺伝因子とIgE反応性に関連する遺伝因子とは必ずしも一致せず、喘息はI型アレルギーやアレルギー性炎症の視点のみでは説明できない病態である。 日本人の成人気管支喘息患者1,532人と非患者3,304人について、ヒトゲノム全体に分布する約46万個の一塩に多型のゲノムワイド関連解析(GWAS)が行われ、成人気管支喘息の発症と関連しているSNPが探索された。さらに独立した成人気管支喘息患者5,639人と非患者24,608人について追認解析が行われ、5つのゲノム領域4q31、5q22、6p21、10p14、12ql3に存在する遺伝子多型が、日本人の成人気管支喘息と強く関連することが判明した。これらのゲノム領域には、これまで呼吸機能の1秒率との関連が報告されているSNPや、感染や炎症に関わる免疫応答遺伝子が数多く含まれていた。また、気道上皮細胞で強く誘導される遺伝子のTSLP遺伝子を含むゲノム領域5q22に存在するSNPは、米国で収集された白人集団でも結果の再現性を確認でき、人種の違いを超えた成人気管支喘息に関連する遺伝要因と考えられた。次に、TSLPに代表される気道の一次防御の破綻を反映する指標として我々は特に呼吸機能の変化に着目した。1500名の検診受診者を対象とし、外因に対するセンサーとして働く分子としてTSLP及びNrf2が呼吸機能に与える遺伝的影響を検討した。日本人の検討で喘息と強く関連したSNPは健常成人の呼吸機能(一秒量)に有意な遺伝的影響を及ぼしていた。さらに経年的な一秒量の低下にはNrf2遺伝子の影響が認められた。さらにNrf2の遺伝的な影響は特に喫煙者において顕著であることが判明した。これらの結果はTSLPやNrf2で表現される気道の一次防御機構の破綻が喘息とCOPDの病態に共通して存在する可能性を示唆している。
|