研究課題/領域番号 |
21390256
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
矢野 聖二 金沢大学, がん研究所, 教授 (30294672)
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研究分担者 |
山田 忠明 金沢大学, 附属病院, 助教 (00507048)
王 偉 金沢大学, がん研究所, 研究員 (80467117)
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キーワード | 肺癌 / EGFR-TKI / 薬剤耐性 / HGF / Met / PI3K / バイオマーカー / EGFR遺伝子変異 |
研究概要 |
上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)はEGFR遺伝子変異を有する肺癌に著効を示す重要な分子標的薬であるが、EGFR変異を有するにもかかわらず25-30%の症例ではEGFR-TKIが奏効しない(自然耐性)ことや著効例においても獲得耐性を生じ再燃する(獲得耐性)ことが臨床上の大きな問題となっている。本研究では、HGFによるEGFR-TKI耐性に対する新規治療法を開発するとともに、HGFによる耐性を予測するバイオマーカーを確立し、これらを用いた個別化医療に展開することを目的としている。本年度は以下のような成果をあげた。 1)HGFの受容体であるMetに着目し、その下流シグナル伝達分子PI3KがHGFによるEGFR-TKI耐性に重要な役割を果たしており、治療法的となることを明らかにした。具体的には、HGFによりEGFR-TKI耐性となるマウスの皮下腫瘍モデルにおいて、PI3K阻害薬単独では腫瘍増大を阻止できないがEGFR-TKIと併用することで耐性が解除され腫瘍増大をほぼ完全に阻害できることを示した。さらにその分子機構は、PI3K阻害薬とEGFR-TKIの併用がPI3K-Akt経路を強力に遮断するためであることを明らかにした。 2)大阪市立大学のグループとの共同研究において、肺癌患者のEGFR遺伝子変異の有無に関わらず血漿中HGF濃度がEGFR-TKI治療の効果と相関を示すことを報告した。また、免疫染色による肺癌組織中のHGF発現と血漿中HGF濃度は必ずしも相関しなかったことから、臨床的に肺癌患者のEGFR-TKI感受性を予測するバイオマーカーとしては、血漿中HGFが優れている可能性を示した。 今後も、HGFによる耐性を解除する新たな薬剤や、耐性を予測するよりよいバイオマーカーを探索する予定である。
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