研究課題
上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)はEGFR遺伝子変異を有する肺癌に著効を示す重要な分子標的薬であるが、EGFR変異を有するにもかかわらず25-30%の症例ではEGFR-TKlが奏効しない(自然耐性)ことや著効例においても獲得耐性を生じ再燃する(獲得耐性)ことが臨床上の大きな問題となっている。本研究では、HGFによるEGFR-TKI耐性に対する新規治療法を開発するとともに、HGFによる耐性を予測するバイオマーカーを確立し、これらを用いた個別化医療に展開することを目的としている。本年度は、HGFによる耐性の臨床的意義を検討するために、われわれは12施設の共同研究として日本人EGFR変異肺がん症例においてEGFR-TKI耐性を示した症例の組織中のHGF, 790M, Met増幅の頻度を解析した。獲得耐性を示した23腫瘍のうち、HGF高発現は14例(61%)、T790Mは12例(52%)、Met増幅は2例(9%)に認められ、HGF高発現が最も高頻度に検出された。一方、EGFR変異を有するにもかかわらずEGFR-TKIが奏効しなかった45腫瘍において、HGF高発現は13例(29%)、T790Mは0例(0%)、Met増幅は2例(4%)に認められ、HGF高発現が最も高頻度に検出されることが明らかになった。よって、HGFは、EGFR-TKIの獲得耐性のみならず自然耐性をも誘導し、少なくとも今回の日本人EGFR変異肺がん症例においては最も頻度の高い耐性因子であることが示唆された。耐性症例におけるHGFの産生源としては、獲得耐性症例においては全例がん細胞であった。一方、自然耐性症例においてはがん細胞以外に間質の細胞がHGFを高発現している症例が2/13例(15%)あった。また、血液中のHGF測定によりEGFR-TKI感受性を予測しうることも報告できたことから、HGFをバイオマーカーとしたEGFR-TKI耐性の新規治療法開発を今後も行っていく予定である。
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