研究概要 |
本研究課題は、肺癌の転移機構の解析による治療分子標的の探索を目的として、転移をしている癌細胞そのものを分離・濃縮する技術開発を行い、その技術を用いた循環血液中癌細胞(CTC)の生物学的・遺伝学的特性を明らかにすることである。本年度は、CTCの検出に適したマイクロフルイディク・デバイスの開発と、EMT関連遺伝子解析を実施した。(1)文部科学省先端研究施設共用イノベーション創出事業ナノテクノロジー・ネットワーク中部地区ナオテク総合支援(ナノデバイス開発支援-名古屋大学プラズマナノ工学研究センター馬場嘉信教授)の研究支援の下に、循環血液中の微小な細胞群の検出に適したナノ・マイクロピラー構造の設計と試作を開始し、プロトタイプモデルを作成した。(2)マイクロフルイディク・デバイス流路内のナノ・マイクロピラーへのCTC結合認識に用いる抗上皮細胞接着分子抗体(EpCAM,抗cytokeratin,CD133)について、そのナノ・マイクロピラーへの至適な化学的結合をアビジンービオチン化法により確立し、試作品を用いた実証実験を開始した。(3)CTCが上皮性特性から間葉系特性に変化しているかどうかを検討するための基礎研究としてEMT関連遺伝子(Twist遺伝子)の肺癌における発現と遊走能について検討した結果、Twistの発現により間葉系特性を獲得し、遊走能を獲得することが明らかとなった。 これらの結果に基づき、次年度は、マイクロフルイディク・デバイスのさらなる改良と実用化に向けての検討、CTCのさらなる物学的・遺伝学的特性解析を展開する予定である。
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