研究課題/領域番号 |
21390259
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 貞嘉 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40271613)
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研究分担者 |
森 建文 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (40375001)
阿倍 倫明 東北大学, 病院, 助教 (40400246)
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キーワード | メチルグリオキサール / 腎血行動態 / 酸化ストレス / インスリン抵抗性 / 高血圧 |
研究概要 |
Methylglyoxal(MGO)は解糖系から産生されるカルボニル誘導体で慢性腎臓病でその血中濃度が上昇する。本研究では慢性腎臓病の心腎障害に対するMGOの関与を検討した。8週齢のDahl食塩感受性高血圧(DS)ラットに1%MGOを経口飲水投与し4週間観察したところ、血圧が上昇するとともに尿蛋白が増加し糸球体尿細管障害がみられ、腎内のカルボキシエチルリジン(CEL)と8-OHdGは増加した。また同時に心筋および心血管周囲の線維化を認めた。アンジオテンシンII受容体拮抗薬であるカンデサルタンの投与によりMGOの投与によるDSラットの血圧上昇は有意に抑制され、糸球体尿細管障害および心筋、心血管周囲線維化は有意に抑制された。一方、4週間1%MGOを経口飲水投与し、インスリン感受性を有意に低下させたSprague-Dawley(SD)ラットの長趾伸筋の毛細血管密度をDPPIV-AP染色により評価した所、減少傾向がみられた。この毛細血管密度の減少はカルボニル消去剤であるN-アセチルシステインおよびTM2002で抑制傾向にあった。以上の結果よりMGOは酸化ストレスの亢進する食塩感受性高血圧モデルで、血圧を上昇することが示され、これにはレニン・アンジオテンシン系の関与が示唆された。これが慢性腎臓病における血圧上昇の一機序になっていることが考えられた。また血圧の上昇に伴い、腎尿細管および全身血管を障害し、慢性腎臓病における心腎連関に関わる可能性が示唆された。また、MGOは同時に骨格筋毛細血管障害を介し、インスリン抵抗性に関与する可能性が示唆された。従ってMGOによるカルボニルストレスは慢性腎臓病の病態に深く関与することが示唆され、新たな治療ターゲットになり得ると考えられた。
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