メチルグリオキサールは解糖系から産生されるカルボニル物質であり、糖尿病や腎臓病における臓器障害に関与することが知られている。本研究では高血圧における腎および脳内抵抗血管Strain vessel灌流領域に対するメチルグリオキサールの役割について検討した。9週齢の脳卒中易発症自然高血圧発症ラット(SHR-SP)に高食塩を2週間負荷した。血圧は食塩負荷により有意に上昇したが、Ca拮抗剤のニフェジピン、エホニジピンやアンジオテンシンII受容体拮抗薬のイルベサルタンを投与することで血圧上昇が抑制された。尿中のアルブミン排泄量は食塩負荷により有意に増加したが、ニフェジピンやイルベサルタンの投与により減少した。腎Strain vessel灌流領域の問質障害、傍髄質糸球体障害もまた食塩負荷により有意に増加したがニフェジピンの他、エホニジピンやイルベサルタンの投与により減少した。酸化ストレスのマーカーである8-OHdGの免疫染色においては、SHR-SPの腎髄質尿細管に有意な染色の増加が認められたが、エホニジピンやイルベサルタンの投与による有意な腎保護作用が確認され、高食塩と酸化ストレスの関与が示唆された。また、脳卒中の発現頻度は食塩負荷したSHR-SP群に比べエホニジピンやイルベサルタン投与群で低下した。このようにStrain vesseIの灌流領域で血圧上昇に伴った臓器障害が認められた。この臓器障害にはStrain vesselの特異な血管構造の他、酸化/カルボニルストレスが関与している可能性が示唆された。今後、酸化/カルボニルストレスが脳腎の臓器障害に関わるメカニズムについて検討していく。また、現在GLO-1過剰発現ラットの交配を行い、ジェノタイピング中であるため、今後、GLO-1過剰発現ラットを用いたメチルグリオキサール特異的な臓器血管障害を評価する予定である。
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