研究課題/領域番号 |
21390261
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長瀬 美樹 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60302733)
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研究分担者 |
藤田 敏郎 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (10114125)
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キーワード | 慢性腎臓病 / 生活習慣病 / メタボリックシンドローム / 糸球体足細胞 / アルドステロン / 鉱質コルチコイド受容体 / Rac1 / Sgk1 |
研究概要 |
1)培養糸球体足細胞を用いた検討で、酸化ストレスや高血糖、アンジオテンシンIIなどの刺激が時間依存性にRac1活性化を引き起こすことを見いだした。さらに、こうしたメタボリックシンドロームの病態に密接に関連する刺激によってRac1の活性化が生じたことから、メタボリックシンドロームモデル動物の腎障害におけるRac1の関与を検討した。その結果、メタボリックシンドロームを呈するSHR肥満ラットでは肥満のない高血圧モデルに比し腎臓でのRac1活性が亢進しており、Rac阻害薬投与によりその腎障害(アルブミン尿、足細胞障害など)が著明に改善することが示された。 2)MR活性化から腎障害にいたるシグナルカスケードの解明として、セリンスレオニンキナーゼであるSgk1に着目した検討を行った。野生型マウスならびにSgk1ノックアウトマウスを用いて片腎摘出+アルドステロン慢性投与+高食塩食モデルを作製したところ、野生型マウスでは高血圧、アルブミン尿、足細胞障害、糸球体硬化、腎線維化が生じたが、Sgk1ノックアウトマウスでは腎障害のフェノタイプが非常に軽微であった。このことから、アルドステロンによる腎障害のメディエーターとしてSgk1の重要性が示された。 このように、本年度の研究を通して、より臨床病態に近い慢性腎臓病モデルにおいてもRac1の過剰活性化が腎障害の進展に深く関与しており、Rac阻害薬が腎保護に有用であることが示された。このことは、今後慢性腎臓病の新たな治療法としてRac阻害薬の実用化をはかる上で重要な礎になるものと考えられた。
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